スペイン語やスペイン語圏文化・社会などに関するコラムやレポート

 スペイン語を学ぶだけでなく、それが話されている社会についても理解を深めるために、スペイン語圏の文化や社会に造詣が深い執筆者によるコラムを掲載しています。コラムの多くが教科書のユニットテーマと関連しています。また、関連情報や留学体験記などもレポートも掲載しています。

 下のリストから掲載回をクリックすると、当該回だけが表示されたページへジャンプします。また、コラム・レポート本体欄の右肩にあるカテゴリ選択からテーマを選ぶと、関連するものが表示されます。
 

スペイン語やスペイン語圏の文化・社会などに関するコラムやレポート

コラム・レポート >> 記事詳細

2016/04/28

第6回 スペイン語の多様性 ―単語の出自から― (3)[三好準之助]

Tweet ThisSend to Facebook | by KUP

スペイン語の多様性 ―単語の出自から―(3)


三好準之助

 日本は海に囲まれた島国ですから、外国とは船や飛行機を使って出入りします。スペインはヨーロッパ大陸の西の端のイベリア半島にあります。ほかのヨーロッパの国々とは陸続きですから、外国の人が徒歩ででも容易に出入りできます(現在はヨーロッパ連合(EU)があるので、ほとんどのヨーロッパの人々は国境を自由に往来することができます)。スペインは古くからヨーロッパとアフリカの経由地であったため、多くの外国人が北から南からやってきたり通過したりしていました。人の往来は、彼らが使う言語の要素がスペイン語に入る機会にもなります(前回にお話したアラビア語を使う人たちもその一部です)。今回は近隣の国々からスペイン語に入った単語を紹介します。

 スペインに隣接している国はポルトガルとフランスです。ピレネー山脈の北に広がるフランスは、フランス革命(1789年)を経た19世紀の初めにひとつの国になりました。フランスの国語(フランス語)は国家形成の当時に北フランスのロマンス語(オイル語)を母体として制定されました。しかしスペインに隣接する南フランスには古くから別のロマンス語が使われていました。それがプロバンス語です。スペイン語は中世から、この言語の単語を受け入れています。日本では料理に月桂樹の葉が使われますが、月桂樹は「ローレル」と呼ばれることもあります。日本語には英語のlaurelから入ってきました。この月桂樹はスペイン語でもlaurel[ラウレル]と言います。スペイン語には13世紀ごろに古いプロバンス語(laurier)からlorer[ロレル]という形で入りました。地中海地域における月桂樹は、ギリシア時代からスポーツの勝利者に冠として与えられる有名な木ですね。この古プロバンス語はラテン語laurusから形成されました。日本語には、英語messageから入った「メッセージ」という外来語があります。この英単語は古いフランス語から借用されましたが、元はプロバンス語のmessatgeです。そしてこのプロバンス語はスペイン語に入って、12世紀ごろにはmesaje[メサジェ]という形で使われ、現在ではmensaje[メンサヘ]として使われています。

 フランス語からスペイン語に入った単語もたくさんあります。しかしその語源が、北フランスのオイル語系なのか、南フランスのプロバンス語なのか、あるいはスペイン東部のカタルーニャ語からなのか、判然としないことが少なくありません。フランス語からスペイン語に入ったとされる単語には、たとえば既に中世で使われていたchimenea[チメネア]があります。「煙突」という意味です。このスペイン語は同義のフランス語cheminéeから借用されました。このフランス語が英語に入ってchimneyになっています。「庭」を意味するスペイン語jardínもフランス語jardin[ジャルダン]から形成され、15世紀末頃から使われています。古いドイツ語には同系統のことばgart「円」があり、それから英語のgarden「庭」が生まれました。近世にはいると多くのフランス語がスペイン語に入ります。「ズボン」の意味のスペイン語pantalón[パンタロン]はフランス語pantalonから入りました。日本でも裾(スソ)が広がった長いズボンのことを「パンタロン」と呼びますね(日本語には直接フランス語から入ったようです)。「公園」の意味のスペイン語parque[パルケ]もフランス語系です。同義のフランス語parc(もとの意味は「囲いをめぐらせた狩猟場」)から形成されました。このフランス語は英語に入ってparkになります。

 フランス語ほどではないですが、イタリア語からも多くのことばがスペイン語に入っています。日本語で「カーニバル」と言えば華やかな催しを指しますね。この日本語は同義の英語carnivalから入りました。そしてこの英語はイタリア語carnevale(もとの意味はカトリックの行事の「謝肉祭」)の借用語ですが、このイタリア語はスペイン語に入ってcarnaval[カルナバル]になりました。また、日本語にも明治時代に英語modelを介して「モデル」ということばが入っていますが、この語源はイタリア語のmodelloです。イタリアは芸術の国ですが、楽器の「ピアノ」はイタリアで発明されました。それが英語pianoになって日本語にも入りましたが、スペイン語にも19世紀に同じつづりで入ります。日本語の「セレナード、小夜曲」はフランス語のsérénadeから入りましたが、それはイタリア語serenataから形成されました。そしてスペイン語にはこのイタリア語が同じつづりで入っています。

[三好準之助]
京都産業大学名誉教授

00:00 | スペイン語の多様性
PAGE TOP